× 想詩 ×







今日は珍しく特にすることもなく、俺は暇を持て余していた。
こういう時は、いつも"静かな所"に行くのだが、今日は違った。
"静かな所"とはとても懸け離れた"人混み"の中を、ただ、あてもなく歩いていた。




"パーン パーン パーン…"




人混みから少し抜けた時、ふと、聞き覚えのある音が聞こえてきた。
どうやら、近くの公園からしているようだ。




"パーン パーン…"




公園に入るとすぐに、テニスコートが見えた。
音は、そこからしているらしい。
俺は、無意識のうちにその方へ歩いていた。




"パーン パーン パーン…"




そこでは、若い女性2人が軽いラリーをしていた。
俺はしばらく、その様子を見ることにした。






人混みの中を歩いて疲れていた俺は、ちょうどいい木陰を見つけたので、そこに座って彼女達のラリーを見ていた。




"パーン パーン パーン…"




しばらく見ていると、ふと、頭の中をよぎっていったモノがあった。




「…アイツらは無事でやっているだろうか?」




俺が青学を離れて、もう2週間になる。
大石から、関東大会も決勝戦まで進んだというメールが昨日届いた。




「大丈夫だよな…?」




決勝の相手は、やはり立海大になったらしい。
だが、アイツらは相手がどんなヤツだろうと、決して怯むようなことはない。
そんな頼もしい連中ばかりだ。
今頃は、決勝に向けて練習に励んでいるはず…なのだが……。




「すいませ〜ん」
「…?」
「ボール、取ってもらえませんか?」




周りを見渡すと、俺のすぐ傍にボールが1つ転がっていた。




「これですか?」
「…はい! ありがとうございます!!」


ボールを渡す時、彼女の顔を見て俺は息を呑んだ。




「…!?」




彼女は、あまりにも"アイツ"に似ていた。


「…? どうかしましたか?」
「…いえ、何でもないです…」
「では、これで…ボール、本当にありがとうございました!」



そう言って、彼女はコートに戻っていった。




「気のせい…だよな……?」


そもそも、"アイツ"がここに居ること事態ありえないのだ。
なぜなら、今俺は宮崎、"アイツ"は東京に居るのだから…。



「そういえば…あの時も、こんな日だったな…」





あれは確か、関東大会が始まる2週間ぐらい前のことだ。
竜崎先生が「たまには休みも必要じゃ」とおっしゃい、久しぶりに部活は休みだった。
そこで俺は、気分転換に近くの公園まで散歩することにした。
道の途中では、部活仲間に会ったりもした。


公園に着いたら、適当な木陰を見つけて休んでいた。
木漏れ日がとても暖かくて、時々吹く風が心地よかった。
あまりにも心地よかったので、俺はいつの間にか眠っていた。




"パーン パーン…"




ふと、聞き覚えのある音で俺は目を覚ました。




"パーン パーン パーン…"




音のする方へ行くと、1人の女性が壁打ちをしているらしかった。




"パーン パーン…"




「…あっ!?」



遠くからその様子を見ていたら、強く打ちすぎたのか、女性はボールに追いつくことが出来なかった。



「またやっちゃた…なかなか加減出来ないなぁ〜……」



ボールは俺の目の前まで転がってきていた。




「すいませ〜ん!! そのボール取って……って、手塚くん!?」
「…!?」
「奇遇だねv いつからそこに居たの?」
「結構前からだな…」
「えっ…じゃ、ずっと見てたの?」
「…あぁ」
「恥ずかしいなぁ〜…///」
「休みの日はよく来るのか?」
「まあね。こういう時ぐらいしか練習出来ないし…」
「それならウチのマネージャーなんかにならずに、女子テニス部に入った方が良かったのではないか?」
「ん〜…それも考えたんだけどね〜…続けていく自信なかったから…」
「そうか…」




彼女には普段、部活で世話になっている。
何かお礼をしたいとずっと前から思ってはいるのだが、何がいいかわからず、しばらく考えていた。
だがこの時は、ちょうどいいのが1つ思い浮かんだ。




…俺で良ければ相手になろうか?」
「ホント? …あっ、でも関東大会までそんなに長くないのに、いいの?」
「軽くなら問題ない。いつも部活で世話になっている礼だ」
「やった〜!! ありがとv」




ラケットを持っていなかった俺は、からラケットを借り、軽いラリーを始めた。




"パーン パーン…"




「なかなかやるじゃないか」
「そう? まだまだだと思うんだけど…」




"パーン パーン…"




「テニスはいつ頃から始めたんだ?」
「え〜と…中学入ってからだったカナ?」
「それで、これだけの腕があるのなら結構なものだ」
「そうなの?」




"パーン パーン パーン…"




30分ぐらい続けて、休憩した。
俺はまた木陰で休んでいた。
少ししたら、頬に冷たい感触がきた。



「…!?」
「はいっ、手塚くんのv お茶で良かった?」
「あぁ…ありがとう」
「どういたしましてv」




から貰ったお茶を飲みながら、ふと、妙に緊張している自分に気づいた。
今年になってからこういうことが多々あった。
なぜか彼女といる時にだけなるのだ。
理由がわからず、大石にこのことを相談したら、"のことが好きなんじゃないか?"と言われた。
それからというもの、のことをさらに意識するようになり、
彼女と一緒にいる時は、自分が自分ではないような気がしてならなかった。




「そういえば、手塚くん…腕は大丈夫なの?」
「あぁ…」
「関東大会にも強い学校たくさんいるでしょ?」
「まぁな…」
「あんまり無理しないでね?」
「大丈夫だ…1ヶ月前には完治している」
「そっかぁ…じゃ、無理しない程度にがんばってねv」
「あぁ…」




この時の彼女の一言は、木漏れ日のように、かすかだが暖かく感じた。




「あっ!?」
「…どうした?」
「手塚くんの笑顔…初めて見た…」



そのせいなんだろうか、気がついたら俺は笑っていた。



「…お前のおかげだな」
「ん?…何が?」
「お前といるとどんな時でも、笑顔でいられるような気がする…」
「…どうして?」
「俺は…お前が……が好きだ…」
「……!?」
「付き合ってくれないか?」
「…え〜と……」




自分の想いに歯止めが利かなくなり、いつの間にか俺は、想いを口にしていた。




「…俺じゃダメか?」
「えっ…そんなことないよ!? …私なんかで良ければよろしくお願いします///」
「…こちらこそよろしく頼む///」
「…あれ? 手塚くん、顔赤くなってるよ?」
「…!?…そういうお前こそ赤くなってるぞ」
「ありゃ…お互い様だねw」
「…そうだな」




この後俺たちは、陽が暮れるまで話続けた。






それからあっという間に時は流れ、関東大会1回戦を迎えた。
試合は3勝2敗1ノーゲームで俺たち青学が勝った。
だが、この試合で俺は肩を故障してしまった。
そして、この怪我を完全に治すため、竜崎先生の薦めで俺は宮崎に行くことにした。
彼女を東京に残して…






試合が終わった日の夕方、俺とは公園のベンチに座って話をしていた。




「今日はご苦労様v 肩、だいぶ痛む?」
「今は大丈夫だ」
「そっか…そういえば、明日はレギュラーのみんなでどっか出かけるんだって?」
「あぁ、場所はまだ聞いていないがな…」
「いいなぁ〜」
「お前も来るか?」
「ん〜…行きたいけど…いいのカナ?」
「いつもマネージャーの仕事をがんばってやってくれているんだ、問題はないだろう?」
「でも…」
「明日、俺が先生に聞いてみよう」
「ホント?…ありがとう!!」




俺たちはしばらくの間、たわいもない話をしていた。
だが、俺にはに伝えなければならないことがあった。
つい先程、竜崎先生と話し合って決めたこと…宮崎に行くことを……。




…聞いてほしいことがある」
「ん、何? 急に改まった言い方して」
「実は、さっき決まったことなんだが…」
「うん」
「明後日、宮崎に行くことになった…」
「えっ…!?……」
「肩の治療のためだ…いつ帰ってくるかは…わからない……」
「…そっか…治せるなら早めに治した方がいいもんね……」
…」
「治療…がんばってねv」
「すまない…」




目にいっぱい涙を溜ながらも、俺に心配をかけまいと強がっている彼女を見るのは、とても辛かった。
あまりにも見ていられなくて、俺は彼女を抱きしめた。




「…!?…国光…?」
「本当にすまない…」
「悪いのは国光じゃないんだから…気にすることないよ…」
「だが…」
「気にしない、気にしない!」
「……泣きたいなら我慢しなくていいんだぞ?」
「えへv…バレてた?」
「とっくにな…」
「そっか…ありがとv
 …でもね、ただ泣きたくて泣きたくて、泣きたくてしょうがない時って、
 誰がソバに居てくれようと、慰めてくれようと、変わらないと思わない?」
「………」
「…だからね、私は、誰にも迷惑かけずに、ただ一人で泣きたいの……」
「…そうか…無理するなよ……」
「うん…」




彼女の弱々しい、精一杯の強がりに、俺は本当に申し訳ない気持ちで一杯になった。




「お詫びというお詫びにならないかもしれないが、これ…受け取ってくれるか?」
「……!?…これって…」
「お前が欲しがっていたペンダントだ。空いた時間に買ってきたんだが…」
「ありがと!! …きれいだなぁ〜…v」
「それと…もう1つ受け取ってほしいモノがある…」
「…えっ……? 」




俺は彼女の唇に俺のそれを重ねた。


「///…国光……」
「これから先、辛いだろうが、その時は空を見て、俺のことを待ち続けてほしい…」
「うん…待ってる……だから、必ず帰って来てね!!」
「あぁ、約束する」




そして2日後、俺は宮崎に来た。




今日はやけにアイツらのことを考えている。
気がつけば、もう陽は沈みかけていた。
病院に戻る帰り道の途中、ふと、携帯が鳴った。
相手は不二だった。



「もしもし…」
「あっ、手塚? 僕、不二だけど…」
「あぁ…」
「そっちはどう? 元気にやってる?」
「あぁ…お前たちはどうだ?」
「みんな元気にやってるよ。今日もたった今練習を終えたばかりさ」
「そうか…」
「ところで、手塚? さんとはちゃんと連絡とってるの?」
「…そういえば……」




宮崎に来てからは、"疲れているだろう"とか"邪魔をしては悪い"と思って一度も連絡はしていなかった。




「やっぱり、してないんだ…」
「あぁ…向こうも何かと忙しいだろうと思ったから…」
「今日、さん泣いてたよ…」
「何だって…?」
「"国光が全然連絡くれない"ってさ…」
「そうか…すまない…」
「謝るのは僕にじゃないだろ?」
「そうだな…はもう帰ったのか?」
「うん…今頃は家に着いてると思うよ」
「そうか…わかった…」
「ねぇ、手塚?」
「…何だ?」
「これ以上、さんに辛い思いをさせたら、僕が奪うからね?」
「…なっ…!? そんなことはさせない!!」
「くすっ…そうならないことを祈るよ…それじゃ、これで…」
「あぁ…」
「じゃあね」




不二との会話が終わった後、俺は急いで空港に向かった。東京に行くために…。





東京についた俺は、の家へと急いだ。
時間は午後7時。今なら間違いなく家にいるはずなんだが…



「確か、この辺だったよな…?」



しばらくして、やっとの家に着いた。
チャイムを鳴らそうかと思ったが、の部屋の明かりが付いているのが見えたので、にメールを送った。






"T:
 S:今すぐ…

 窓の下を見てくれないか?"






が読んでくれたかどうか心配だったが、少ししたら、部屋のカーテンが開き、の姿が見えた。



「…国光…!?」
「久しぶりだな、…」
「ちょっと待ってて! 今そっちに行くから!!」

少ししたら玄関からが出てきた。

「国光…!!…」
「元気そうだな、…」
「国光もねv それより、来てくれるなら来てくれるって連絡くれれば良かったのに…」
「いや、今日、不二からお前のことを聞いて、急いで来たものだから…」
「不二くんが?… なんて言ってたの?」
「今日、お前が泣いていたって…」
「えっ…? 私泣いてなんかいないよ?」
「…そうなのか? 俺が全然連絡くれないって泣いていたって確かに聞いたんだが…」
「ん〜…国光が連絡くれないってグチったのは事実だけど…泣いてなんかいないよ?」
「そうか…なら良かった…」
「でもね、国光? …毎日じゃなくてもいいから連絡頂戴?…
 それだけでもだいぶ違うから……そうじゃないと、今度はホントに泣いちゃうからね?」
「…わかった…今度から送るようにする」
「ここで立ち話するのもなんだし、あの公園に行こうか?」
「そうだな」




公園に向かっている間も俺たちは話続けた。
俺がいなくなってからの部活の様子や、関東大会の試合の様子など、
公園に着いてからも絶えることなく、時を忘れて話続けた。




「そういえば、国光と二人でこの公園来るのも久しぶりだね」
「そうだったな…確か、最後に来たのは関東大会1回戦が終わった後だったな…」
「国光が宮崎に行ってから、私、毎日空見てた…」
…」
「ただ辛くて辛くて、泣きそうな日もあった…」
「………」
「でも、国光が…絶対帰ってくるって約束してくれたから…今までがんばってこれた…
 そして、これからもがんばっていける…」
「そうだな…俺もが待っていてくれるから、治療の方もがんばってこれた…」
「肩、早く治して帰ってきてねv」
「あぁ…」




ふと、時計を見ると9時を回ろうとしていた。




「もうそろそろ行かなくては…」
「えっ…もうそんな時間?」
「あぁ、すまない…」
「気にしない、気にしない! あっ…今度来る時は連絡頂戴ね? 空港まで迎えに行くからv」
「覚えておく…」
「それじゃ…」




前にしたように、俺はまた、と唇を重ねた。



「"決勝がんばれ"とみんなに伝えておいてくれ」
「うん…国光もがんばって怪我治してね…」




そして俺は宮崎に戻った。



それ以来、とは毎日連絡をとっている。
何日かして、大石から"最近、が前みたいに明るくなった"とメールがきた。
どうやら無事にやっているらしい。
俺の肩の治療も順調に進んでいた。
このままいけば、全国大会までには間に合うだろう。
アイツらと再びテニスが出来る日は、そう遠くはないのかもしれない。






















想詩〜ウムクトゥ〜


  この作品を読んでくださった皆様、初めましてm(_ _)m
  テニソング同盟No.81のsora4105です。

  この作品は手塚の「White Message」のカップリングに入っている「想詩〜ウムクトゥ〜」を元に書いてみました。

  初めて、曲を聴きながら、"この曲ならドリーム書ける!"と思い、突発的に書いてみたのはいいのですが、長いですね…(^^;)
  なるべく歌詞の内容に近付くように…と考えていたらこうなってしまいましたw
  そのせいもあってか、部分的に"無理矢理つなげた"って感じのところがありますが気にしないでください(^^;)

  それでは、最後になりましたが、このような駄文を読んでくださり、本当にありがとうございましたm(_ _)m
(by sora4105さん)    


  NO.81 sora4105様
  SORA4105WEB

  モドル



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